「トリュフの歴史」 ザッカリー・ノワフ


 台所の宝石と言われるトリュフは、かつて蛮族の食べ物でローマ帝国破壊後に食されるようになったという。
古代ローマ人は豚肉を好み、その後、ローマ帝国を倒したゲルマン民族は豚肉の加工品を楽しんだ。当時、豚は放牧されていたそうで、豚だけが木の根に発生し熟したトリュフの芳香を嗅ぎ分け、トリュフは掘り起こされることによって繁殖するという。


 悲しいかな、なにが想像できないかって、食べたことがない味は想像のしようがない。手に取ったのは出版社が「原書房」だったからで、「みすず書房」と並んで地味に素敵な本が多い。ーーーこれが、読み始めたら面白い。


 1989年に翻訳された「木を植えた男」ジャン・ジオノ原作の絵本について一章を割いている。
絵本の主人公は、第一次大戦の前にフランスのプロヴァンス地方を旅し、木を植えて暮らしている羊飼いの男に出会う。男はドングリを植え、10年の間にプロヴァンス地方の森を蘇らせた。
 現実の世界では、一人の知事が市長たちに働きかけて、トリュフを植菌したドングリを植えさせたのだ。今でも、フランスのヴォクリューズ地方はトリュフ生産の中心地だとのこと。


 ちなみに、絵本の主人公は実在の人物ではないそうで、筆者は「木を好きになって、木を植えてもらうこと」が目的なので、一切の著作権を放棄したとのこと。この本は世界中に広まり翻訳されたので、そういう意味では目的を達したといえる。


 「トリュフの歴史」は料理とワインについての良書を選定するアンドレ・シモン賞特別賞を受賞したそうでレシピ付きだ。
 ーーーまあ、レシピがついていてもトリュフがなければ話にならないし、買える食材でもないから役立たないわね。