「女の一生」 伊藤比呂美 著


 友人が「機内で読んで」と出がけに送ってくれた岩波新書
なんでこんな薄っぺらな本が女の一生なの?と開いたら、けっこう面白かった。



 中学生のころ、モーパッサンの「女の一生」を読んで、『人生って、みんなが思うほど良いものでも、悪いものでもない』という言葉に妙に納得した。
 人生がまだ何も始まっていない13歳で、そう思ったんだよね。それ以後、まあいろいろあって、タイくんだりで日本語教師をしているけれど、今もそう思ってる。ーーー『人生って、みんなが思うほど良いものでも、悪いものでもない』と。


 それはさておいて、この本は一人の女の一生ではなく、いろいろと問題ありの女が満載だ。著者自身が拒食と過食を繰り返し、なんども結婚し、コスモポリタンのような生活をし、問題児を抱えたシングル・マザーでもあった。

 それぞれの課題を、ばっさりと立ち切る潔さが心地よいかも?


ーーー以下引用 「年を取る」

 ・・中略・・・・
 カリフォルニアに来て、60の女を年寄り扱いにしたら、まず、生きて日本に戻れないと覚悟してください。ここでは、50の女は中年で、60の女も中年です。70の健康な女は年長の中年です。中年として社会にかかわり、自分をみがき、遊びます。80も過ぎ、あちこちに故障を感じはじめてやっと、女たちは自分が「年取った女」であると自覚するようになりますが、健康で元気ならば、80でも90でも、ただの「元気な女」です。

 カリフォルニアは、空は青いし、いつも日照りで乾いているし、文化は能天気で前向きすぎて、複雑さと陰影に欠けますし、資本主義は弱肉強食で、食べ物の量は多すぎます。でも、女が人間として自分の人生を生き抜くには、自由なところです。』


 ーーーいいじゃん、みんな、「ただの女」で元気に生きようぜ!