「いつか、きっと」ティエリ・ルナン 文 オリヴェ・タレッタ 絵


           いつか、きっと



      小さな島に、子どもがひとり、すわっていた。
         子供は世界をながめ、考えた。


      戦う兵士たちがいる。
     それを見て子どもは思った。
 いつか、きっと、軍服を明るく塗りかえよう。
        銃の先を、小鳥の止まり木に、
         羊飼いの笛にしてしまおう。



      飢えに苦しむ人がいる。
     それを見て子どもは思った。
   いつか、きっと、投げなわで雲をあつめ、
      砂漠に雨をふらせよう。
     とうとうと流れる川をひこう。



      貧しい暮らしがある。
     それを見て子どもは思った。
    いつか、きっと、数をおぼえ、
       計算をならおう。
  そしてお金やパン、土地や空気をわけあおう。



      力をかさにきた人がいる。
   おいしいものをたらふく食べ、規則を定めて、
        居丈高に命令する人が。
   いつか、きっと、あの人の目をひらかせよう。
  さもなければ、どこかに追い払ってしまおう。


      広い海がある。
    それを見て子どもは思った。
  いつか、きっと、よごれた水をきれいにし、
     浜辺でまどろみ、夢を見よう。


      深い森がある。
    それを見て子どもは思った。
  いつか、きっとあのなかを散歩し、探検できたらたのしいだろうな。
  いろんなお話を考えながら、ずっと奥まで入っていくんだ。
   それから草に寝ころび、木々の声に耳をかたむけよう。


      流れる涙がある。
   それを見て子どもは思った。
  ほほよせ、抱き合うことをためらってはいけない。
   いつか、きっと愛していると言えるようになろう。
    愛していると言われたことがなくても。


      子どもは顔をあげた。
     月に旗がたっている。
      なんてひどいことを。
       旗を抜き取り、
      月にあやまらなくては。


      最後にもう一度、
   子どもは島から世界をながめた。
     そして、心を決めた.......


      ......ここに、生まれてこようと。