佳作入賞


 市民芸術祭に出品した油彩が「佳作」に入賞した。
日曜日は山にいく予定で、靴やアイゼン、ストックなどの準備をして玄関に並べ、おやつにパンプキンタルト焼いてウキウキしていた。
 そこに準備委員会からの封書が届いて「あれ、なにか不備があったかな?」と思ったら入賞と日曜日の授賞式のお知らせだった。ーーーあららら、山に行けないじゃん...。


 油彩を始めたばかりなのに入賞は嬉しいことだから、山をキャンセルして授賞式に出ることにした。アーチスト志望としては幸先のいいスタートね。ーーー今夜はワインを開けて一人宴会をしよう!
 


素朴派?


  油彩の場合、絵の具は「置く」って言うんだそう。それを、わたしは「塗る」と言うものだから、いつも言い直される。「描くとか、置くと言いなさい」と。
 わたしが思うに、大きなキャンバスは置くというよりは塗る感じだね。ひと昔前の映画館の看板のイメージかな? 芸術とは程遠い看板屋のような絵はペンキ塗るのと変わんないじゃん?と思ってしまうのだ。


 顔の目鼻口と説明的に描いていくのは、素朴派。皮膚は肌色だよー、と塗っていくのも素朴派。人物デッサンで顔を描き込んでいくのも素朴派。と散々言われた。素朴派って、素人ってこと。ーーーあはははは、笑える。さらに、筆が小さい!と言われた。



 山岳会に入った時も同じようなことを言われていて、岩登りのパートナーに「紐、結んだ?」と言って怒られた。「ロープとかザイルと言えよ。俺はヒモかよ!」と。
 テントの中で全身用のエアマットを広げたら「誰だよ、こんな長いの持ってきて!半身用でいいんだ」「半身用だと足が冷たいじゃん?」と言うと「足はザックの中に突っ込むんだよ」とのこと。
 冬山に60リットルのザックを持って行ったら、共同装備を前に「ザックが小さい!共同装備が入んないだろうが。冬山は100リットルが常識だ」と言われた。


 車の運転ができないので食事担当が多かった。山岳会のコッヘルは大きくて重いので自前でチタンの軽いコッヘルを用意したら「チタンはご飯が美味しく炊けない!」と即却下された。怒られているうちに体力もついてみんなについていけるようになり、海外の山にもじゃんじゃん出かけていたから、人間どう変わるかはわかんないね。


 さてさて、山姥はアーチストに変身できるか? 神のみぞ知る。


がんばったで賞!


 夏休みのワークショップの復習、50号の油彩を市民芸術祭に出品した。
大学の額を借してくれるというので出してみたら、茶色の額の角は塗料が剥げて白く、額全体がまだら模様になっている。思わず「ダサッ!」と口に出したら、「絵の具をザーツと塗ったら目立たんよ」というので塗ってみたが塗ったとところが光って目立つ。額はなんでもいいというけど、ダサすぎるわ....。

 カルチャー教室で教えている友人に電話し、スチールの額を貸りることにした。入れてみたら絵がしまって素敵になった。オンボロ額より数段に見栄えがいい。


 夏以来、日曜祭日関係なく大学で絵を描いていた。
履修外の1年生の授業も受けていたので課題をこなしながら自分の絵も描いていると、毎日帰宅は9時、10時になる。寝るだけの生活を3ヶ月半続けたら、さすがに疲れた。


 絵を描いていると際限がなくて、終わりが見えてこない。
アカデミックな技法の、人物や生物を学んでいるから光と色の明暗が重要になる。地下鉄の中の人間ウォッチングが勉強になった。人の顔や手の明暗のでき方、またいろんな年代の人の顔の輪郭や筋肉のつき方をチェックしていた。気がついたところは翌日に直した。
 油彩をマスターするには10年かかるそうだが、この3ヶ月で少し絵の具に慣れたように思うし、基本的な勉強になった。描いていることが楽しいと思えたことが何より。

 ーーーそうね、この際、奮発して自分自身に「がんばったで賞!」をあげましょう。


 市民芸術祭 札幌市民ギャラリー 南2条東6丁目  12月12日(水)〜16日(日)まで。


山仲間


 退職後に田舎暮らしを始めた山仲間から連絡が入り、札幌に出てくるという。
膵臓癌になってさ、抗がん剤治療の前に仲間に会おうと思って」の言葉にショックを受けた。
「えっ、なんで?それは助からんでしょ!あははははじゃないわよ....」「そうなんさ」明るく笑いながら答える彼女に唖然とした。


 彼女は元看護師で元気印そのものだった。癌は突然発生し、元気な人も関係ないってこと?もう一人の仲間も大腸癌が見つかり、すでに肝臓に転移していて、ステージ4とのこと。そんなことってあっていい? これは大変!絵なんか描いている場合じゃない。大学をサボって街中でお茶タイム。


 女三人で日高、ピリカヌプリの沢に入り、夜中に雨が降り箱状の沢は滝と化し引き返したことがある。私が渡渉に失敗し流されて滝壺に落ちた時、彼女の判断は素晴らしかった。
 ザイルを石に巻きつけてから流したのだ。おかげで滝壺で一回転して浮いてきた。そのまま流されて岩に乗り上げることができた。酸欠で頭がガンガンするのでアスピリンを飲み、なんとか渡渉することができたが、今度は寒さで歯がガチガチし震え出した。彼女は私を銀マットでぐるぐる巻きにし中でストーブを焚いて温めた。


 女三人組はキリマンジャロにも登頂した。20人のメンバーのうち登頂できたのは私たち山の会のメンバー三人だけだった。久々に、そんな、あんな山の失敗談に話しが弾んだ。


 なのになのに、二人とも癌だなんて.....。
「二人に一人は癌で逝く時代よ。先に行って、待っているからさ」と二人は底抜けに明るい。胸に点滴用の針を刺したまま、山スキーにも行っているというし、なんて強くて素敵なんでしょう。二人に共通しているのは精一杯生きてるってこと。
 二人からエネルギーをもらった素敵なお茶タイムでした。



 

銅版画


 いよいよ銅版画に取り組むことになった。
昔、銅版画家の大井戸百合子さんのアトリエに伺ったころがあり、それ以来、小さな絵に広げられる緻密な世界が好きになった。


 初日は銅板をカットし、鏡のようになるまで磨きをかける。2日目は下絵作りでモチーフはオーロラ。下絵を銅板に転写し、ニードルで引っ掻いて腐蝕させ、インクを乗せてプレスし、絵が出来上がる。初めてなので具体的にどうするのかはわからない。一年生も同じことを言っていた。あと、3回の授業で作品が出来上がる。どんな風に仕上がるのか楽しみだ。



師走


 しばれて寒い日が続いている。道路はツルツルで歩幅を小さくしてそろそろ歩き。もう12月、二学期は毎日居残りで絵を描いていているうちに今年が終わろうとしている。
 
 日本画の授業で落款印を作ることになり、苦手な消しゴムハンコ第二弾目を彫ることになった。おしゃべり男子に「苦手だから、私の分も頼むわ」と言いながら漢字の下絵を書く。漢字も独特のスタイルで格式ありそうな文字。


 案の定、凸版は縁が欠けてしまい失敗。こんどは裏に凹半で漢字を彫るも「真」の字の中が口になってしまった。先生に新しい消しゴムをもらって再トライ。ーーー疲れる。


 クサっていたら、おしゃべり男子が「特別に、秘法を伝授しましょう」と言って、デザインカッターの先にマジックで2ミリほどの印をつけ、「これ以上、差し込んだらダメです」とやって見せてくれた。文字も漢字から、ひらがな1文字に変更し、「ま」だけにした。すると、なんと数秒でちゃんと彫れたのだ。「おお、ワンダフル!」彼のおかげで落款印を作ることができた。


 雪も降り出して、今夜は積もりそうなので久々に早く帰ることにした。
「今年も終わるなぁ、来年は3年生で...」とおしゃべり男子がしみじみ言うのでおかしい。「何、年寄りみたいなこと言ってんの」と笑うと、今度は「あ、大福食べたい!」とスタスタ餅屋に入っていく。


「帰ったらご飯じゃん?」と相棒に言うと「この間も餅買ってたわ」とのことで親近感を覚える。我が家はみんな餡もの好き。
 大福は売り切れだそうで、みたらし団子を買ってきた。歩きながら団子をほうばり、ほのぼのしたひとときでした。



 

ムックリ完成!


 先週に続きムックリ製作授業。今日は切り出しナイフを使って外形を形成する。形が出来上がったら2本の紐をつけて完成。
音の出し方を習い練習するが、振動はしても口に当てると音が出ない。なんで?なにかコツがあるのかな?と糸を引いているうちに時間になってしまった。


 後ろの音楽科の学生に「どう、音出た?」と聞くと「8の字結びが出来なくて、吐きそう....」と冴えない顔。ムックリは紐の片方に5センチほどの棒を結びつけて引っ張りながら音を出すのだ。
「なになに、早く言ってよ、元クライマーなんだから。岩登りで最初にマスターするのは8の字結びよ」と言いながら、ちょい、ちょいと結んであげたら目をまん丸くしている。ーーーあははははは、音系男子は説明図をみながら、8の字結びと1時間も格闘していたのだ。根気あるわねぇ...。


 彼が出来上がったムックリを口に当て紐を引いたら、すぐに音が出た。びゅ〜ん、びゅ〜ん、とプロ並みだ。「さすが音楽科!」と拍手喝采です。