「ソロ 」 ラーナー・ダスグプタ


 捨てよう、と積み上げてあったガイドブックのニューヨークだけが見つからない。
アメリカ大陸横断旅のとき、息子にラインを入れ、ニューヨークの地図にメモした南極登山のメンバーの電話番号を送ってもらって以来、記憶にない。


 仕方がないから図書館に地図のコピーにいくと新刊が目に留まり、つい借りてしまう。いつものことながら、すべてのことを後回しにして読み始めると止まらない。翌日の昼までに読んでしまう。


 『夜の死角で、男は不意に目を覚ます。ーーー』の冒頭の文章が印象的に展開する。
第一楽章「人生」
 21世紀の初め、ブルガリアの首都ソフィアでほぼ1世紀を生きようとしている老人が過去を振り返る。帝国主義からファシズム共産主義から資本主義へと時代に翻弄されて生きた貧しく身寄りのない老人は、記憶を箇条書きにして生きてきた証を確認しようとするが記憶は曖昧で点は線を結ばない。


第二楽章「白昼夢」
 帰結しなかった老人の人生が輝かしい成功の物語として紡ぎ出される。記憶をもとに鮮やかに彩色された物語は現実味を帯びて、虚構の空間に漂う。

 
 記憶の断片をリットアップすることや失ったもののリストアップをしてみることって、面白いかも?と思っていたので、ついつい最後まで一気に読んでしまった。しかし、記憶ってなんだろう.....。