節分


 『鬼は外〜!福は内〜!』と鬼に向かって勇ましく豆を投げたいところだが、「本当に怖いのは人間」に関する本を数冊読んだ。

 1冊目は「ボタン穴から見た戦争」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチのルポルタージュ第二次世界大戦下、ドイツ侵略に飲み込まれたソ連白ロシアの子供たちの証言を綴ったもの。一人の子供は恐怖のなかで頭からかぶったオーバーコートのボタン穴から爆弾が落ちるのを見ていた。


 2冊目は「アウシュヴィッツの図書係」アントニオ・G・イトウルベ。同じく、第二次世界大戦アウシュビッツ強制収容所のなかに密かに作られた8冊のみの図書館で、14歳の少女が命を懸けて図書係を務める。実在のモデルがあり、それをベースにした物語で、人は極限状態のなかでも本を読むのだという驚きと、だからこそ本が必要だったのだとの思いが交差する。
 2日ぶっ通しで2冊読んだら、眠れなくなった。小さな子供達の叫び声や肉の焼ける臭いが体にまとわりついて、頭から離れない。


 3冊目は「ブーチンの国」ーある地方都市に暮らす人々の記録 アン・ギャレルズ。
ロシアはカムチャツカとカフカス山脈にあるエルブルースの周辺、モスクワ市内しか知らない。山のついでに観光しただけで、日本のメディアはプーチンの言動しか載せないから、このルポルタージュを読むまでほぼ無知といっていい。取材は旧ソビエト連邦から現ロシア連邦までの、40年間にも及ぶ。


 汚職/賄賂/粛清/核兵器開発による被曝/マフィア/宗教/メディアの自粛/結婚難/セクシャル・マイノリティなど、格差社会であり、富める人はその泥沼をくぐり抜けてきた人たちだ。
 胸が苦しくなって、心臓に良くないから違う分野にしようと思いながら、「家族難民」山田昌弘と「子どもと貧困」朝日新聞社を読んで暗くなり、『あなたにオススメ』検索機能のように勝手に手が本に伸びる。ーーーやばい.....。