合格通知


 「大学どうだった?」と息子に聞かれ、「ガッカリ。 一銭も安くならんかったわ...」とぼやいたら、「何考えてんの?当たり前でしょう!」と言われ、わかってはいたけれど、損したような気分で入学金を払う気になれない。


 山菜のお師匠さんにも同じことを聞かれて「もう、安くしないんだったら、合格させてくれなくてもよかったのに...」と言ったら、笑われた。
 海外の山に情熱を傾けていたころは、惜しげもなくお金を振り込んでいたが、苦労して作品集を作ったのに大学の費用が安くならないとなると、なんだか惜しい。


 考えると、今まで目に見えないものばかりにお金をつぎ込んできたような気がする。
子育て中はスキーに音楽教室。で、札響のメンバーズカードを持っていて、あしげくコンサートに通っていた。子供達が巣立ってからは一人旅と山にハマり、大学に入学してから七大陸最高峰の三峰登頂とカナダへの語学研修。その後、タイに赴任してからも自己投資と称して、フィリピンの語学学校やイギリスでの日本語教授法セミナー、ネパールやヨーロッパ、アメリカ大陸横断旅と大枚を費やしてきた。


 ま、「これがわたしの人生よ」と開き直り、昨日の締め切り日に入学金を振り込んできた。先の見えない人生で、確実なのは「人生が完結する日」が近いということだけ。
 ーーーこれで、また前に進むっきゃ、ないわね。