男前の絵
絵画教室で男前の絵を描く人がいる。
構図をぱっと決め、迷いのない勢いのある線で、ばばばばばっと描いてしまう。透明水彩と白のガッシュを使っているんだけど、ときには油彩のように仕上げる。2時間の間に2枚仕上げるときもあって、合間にハガキにスケッチなどもしていて神業のよう。
わたしときたら、まずモチーフ選びに迷い、構図に迷い、背景に迷う。描き始めても気に入らず、こんなんじゃなくてさ、と消してやり直しているうちはいいんだけど、家に帰ると別のモチーフになってしまう。
水彩で山ごぼうを描いたのだけど、例のごとく気に入らずスポンジでザーッと消したら、消したほうが素敵になった。ーーーえっ、どういうこと?
生前、八木伸子先生が「拭き掃除は大事!」とおっしゃっていたそうな。思いがけないものが見えてくるんだそう。
先生曰く、「消す途中で、こんなところが素敵....」と思うときがあるんだそう。が、その気づきはその人の感性だと思う。
男前の絵を描く人のイワシの絵が素敵なので、写真を撮らせてもらった。
「これって、魚をよく知っている人の絵だよ! 写真、キッチンに飾ったら素敵かも?」と言ったら、「自分で描いたら?」と先生に言われた。「それも、そうね....」と家に帰ったとたん、かぼちゃの絵はイワシになってしまった。
ーーー我ながら、いい仲間に出会えたと思うよ。