無理難題


 友人から油彩の依頼があり、「ほんとう〜?」と喜んだが、まことに難しい題材で、A4サイズくらいのキャンバスに春夏秋冬のもみじとエベレストを描いて欲しいという。
 ーーーいくらなんでも、エベレストにもみじは合わないでしょう....。 もみじなら富士山でしょう? または百歩譲って、羊蹄山とか....。


 「それ、構図としておかしいわ。それにわたしの技量では無理...」と渋ったが、「いいの、おかしくても。わたしだけが見るんだから。小さい絵だとどこでも持っていけるしね」と納得しない。
 これから先、何があるかわからないし、入院したり、施設に入ったりすることも考えているからという。「そこに、好きなもみじの絵があったら幸せでしょう?」というのだ。ーーー気持ちは、わからないでもない。

 
 エベレストともみじねぇ......。
エベレストはあちこちの山から眺めているから写真はあるけどもみじはない。そうだ、ベランダに届きそうなもみじの木があったわ、と朝から写真撮影。
 エベレストはネパールのクーンプ地方、ポカルデ登山のときの遠景を使うことにした。もみじのスケッチもして、エベレストともみじを組み合わせて下絵を描いてみた。ーーーん、なんとかなるんじゃない?


 『為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり』ーーーどうなるんだろう ?