なかなか褒めてくれないね...


 牛の頭骨が出来上がった。
で、先生に見てもらったら、「正確かどうかはわかんないけど、雰囲気は出てきたね。じゃあ、いいお手本を見せよう」と、お手本を持ってきてとなりに並べた。
 そのデッサンがものすごく上手くて、見比べて「わっ、雑!」と叫んでしまった。
「どこが、違うのかよく見て」と言われて、「全部違うじゃん....」と、5時間かけて、もう一度描き込むことに。


 お隣に座っている絵の上手なお嬢さん、出来上がった石膏像、「メジチ」のアドバイスを受けている。
「この像は下向きだから、目線が下にならないとね。ちょっと顎が小さいね」と言われている。
 ビスケットを渡しながら「なかなか褒めてくんないわね」と囁いたら、にっこり笑った。いつも真剣に、そして楽しそうに描いていて、本当に絵が好きなんだと思う。


 彼女は絵の勉強をしたくて、高校卒業後に室蘭から出てきたばかりという。
バイトで自活しながら、週3回学校に通っている。サクサクと手早くて、まず、スケッチでざっと感覚を掴んで、それを石膏像の下においてから本格的に描く。いつも熱心に描いているから、隣に座っているのに話すのは二言、三言。ーーーいまどき、こんなお嬢さんがいるのね。

 「美術大学を目指してるの?」と尋ねたら、「お金がないから、いけないです」とのこと。
こんなに上手なのに、もったいないと思う。業界紙にエッセイを載せている知り合いから、イラストを頼まれたと嬉そうだ。絵を描くことの励みになるね。


 いろんな生徒が通っていて、黙々を課題をこなしている。
日本の生徒って、こんな真面目なんだ。それともここは特別? タイの大学の美術学科はやたら明るくて賑やかだったわ。