油彩デビュー


 不思議なご縁というか、出会うべきして再会をしたと思える先生に油彩を教えてもらうことになった。
まだ山を始める30代のころ、染め織りを習っていた。織りのお師匠さんが乳癌になって機織りができなくなり水彩画を始めた。その先生にお会いしたのだ。


 これから絵を始めたいので手ほどきをしてくれるところを探していると話したら、「どこがいいだろうね...」と真剣に考えてくれた。話していると、彼女は八木保次&信子さんのお弟子さんで好きなアーチストは三岸節子さんだという。今は亡くなったお二人の教室を受け継いでいるとのこと。昔々に、冬の2ヶ月ほど保次先生の人物デッサンに通ったことがある。ここにしよう!と決めた。


「なにをしたい?」と聞かれて「油彩に憧れている」と答えたら、「絵の具と筆とペンティングオイルだけ持ってきて、キャンバスなどは用意してあげる」と言われて油彩絵の具を買いに行った。
 絵の具を買うときはドキドキした。高校のとき油彩絵の具が欲しくて母に電話したことを思い出したのだ。あの時代、油絵の具は高くて買ってもらえなかった。


 教室に行ったら、キャンバスはもちろん、パレットや絵の具箱、筆洗いオイルなど油彩の一式を用意してくださって、感激だった。彼女のご主人や生徒さんたちが、わたしの著書「世界のてっぺんに立った!」を読んでいて、山や本の話で盛り上がった。
 不思議なことに、みなさん本好きで同じような本に感銘を受けている。モンブランに一緒に登った山友の親友も教室に通っていて、本や山の話題が共有できて嬉しい。
 

 しかし、絵画の方は30年のベテランもいらして、レベルが高い。
好きなモチーフを、と言われてデッサンをしたことのあるワイン瓶を選んだ。絵の具の扱い方の基本から教えてもらい、これまたドキドキしながら画布に色を置いた。ーーーうふふふふ、気分はアーチストね!