春、三月


 春とは名のみの、まだ雪国は冬の只中。つるし雛を出したら部屋が花が咲いたように明るくなった。
これは福島に住む友人の知り合いに注文して作っていただいたもの。ひとつひとつ手作りしていて、根気のいる手仕事だ。


 我が家には雛人形がなかった。
娘が小学生のころに欲しがったので「あのね、お雛さまの顔がなんだか怖いのよ....」と言って、二人で紙のお雛様をこしらえた。わたしの母が作った貝がらのお雛様や瀬戸物のお雛様、猫やうさぎのぬいぐるみなどを飾って、ひな祭りをしていた。


 ひな人形は早く飾って、その日に仕舞うとご縁があるそうだ。
綺麗だからと、三月いっぱい出していたせいか娘はまだひとりもので過ごしている。