「世界一貧しい大統領」筆洗 from 東京新聞


「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれたのは、南米ウルグアイの大統領を昨春まで務めたホセ・ムヒカさん(80)だ。もっとも、ご本人は「私は貧しいとは思っていない」と言っている▼ムヒカさんによれば、貧しい人とは、ぜいたくな暮らしを際限なく求め、欲の奴隷となって働き続ける人。逆に「質素でつましい生活をすれば、自分のしたいことをする時間が増える。それが自由だ」と話す▼自由。この人が語るこの言葉には特別な重みがある。彼は反政府勢力の幹部として捕らえられ、十数年間も獄中で過ごした。地面に穴を掘った独房に入れられ、一年余も体を洗えなかったこともあるという▼それは狂気と闘う日々だったという。ムヒカさんは口に石を含み、叫び出す衝動を抑えた。穴に入り込んでくるカエルやネズミとパンくずを分け合い、彼らを友とすることで孤独を癒やした▼そんな極限の生活を体験したからこそ、地球の資源を食い尽くすような大量生産・大量消費の虚構が見えたのだろう。初来日したムヒカさんは「私たちは多くの富を抱え、技術も進歩した時代に生きている。しかし私たちは幸せに生きているのか」と語り掛けた▼五年前の春、大震災と原発事故の不安の中で多くの人が「足るを知る」ことの大切さを感じたはずだ。それを忘れてはいまいかと、ムヒカさんは問い掛けているようにもみえる。


 連日、ヒマラヤのドキュメンタリー番組を見ているが、今夜は世界で二番目に高い山「K2」。世界一難しく、エベレストに比べて格段に登頂者が少ない。ベースから牙のように聳え、雪崩がひっきりなしに起こるのでキラー・マウンテンと呼ばれている。

 2008年、18名が登頂したが下山中に氷塊崩壊で滑落、フィックスロープも切られ、11名のクライマーが死亡した。なぜ、事故は起こったのか、ルートに問題はなかったのか、いかにして下山したのか、興味深かった。
 ネパールのシェルパが暗闇のなかガリーを探し出し無事に下山し、また翌朝一人で救助に向かった。山に対する感覚が研ぎ澄まされた、ものすごく強い男だ。ーーー山は彼のためにあるのだ、と思ったね。

The 2008 K2 disaster occurred on 1 August 2008, when 11 mountaineers from international expeditions died on K2, the second-highest mountain on Earth. Three others were seriously injured
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https://youtu.be/KRBCLHJ0ofw