タイで餡を練る

 タイの小豆は黒い大粒のと、緑色の小粒がある。
粒の真ん中にちょこっと白い線が入っていて、見つけたときは「おお、あるじゃん、小豆!」と嬉しくなった。
子供のころはアンコが嫌いで、匂いだけで歯が浮きそうになった。母は私の分をゴマで包んでくれた。


 ところがね、年を経ると味覚は変わるもんで、アンコ好きになった。
小豆を炊いていると独特の匂いが漂う。鍋のなかでてらりと光る餡の硬さを確かめながら、木べらを回し練っていると、母を思い出した。


 秋の夜、ストーブの上に型をのせておやきを焼いてくれた母のように、わたしもまたアンコを練ってどら焼きを焼いている。
 ーーー母のようには生きたくないと思っていたのに、大して変わらないもんね。母と同じことをしてるわい、と思う