千羽鶴


 世の中には不条理なことが多すぎる。
ネパールで地震が起きた時は、どうして神様は貧しい国に追い打ちをかけるようなことをするんだろう、なにもネパールじゃなくていいんじゃない? と思った。



 26年前、初めてトレッキングのために訪れたとき、ごみ溜めのような街にストリートチルドレンが溢れていた。子供が側溝に寝ていて、打ち上げパーティのご馳走が喉を通らなかった。ポーターの一日の荷揚げ料金がビール1本と同じ値段で、わたしはショックでビールが飲めなった。


 当時、中学生と高校生だった子供たちにそのことを話したが想像がつかないらしい。「一緒にネパールに行こう!」と誘っても却下された。ーーーきれい好きな日本人にごみ溜めのような街は想像がつかないかもしれない。
 
 十数年を経て、登山のためにネパールを度々訪れるようになり、カルチャーショックは薄らいだが、ネパールは相変わらず貧しいままの状況だ。高額な登山料はいったいどこに収まるんだろう、と不思議に思っている。


 ーーー何もできない悲しさ、祈りを鶴に込める。