クリエイティブな生活
ホテル住まいのギムが刑務所長屋にやってきた。
蚊に刺されてテング熱になるのがこわいからと夜はホテルに帰って寝ている。
掃除用具もないだろうからと思い、モップをもって「床拭きしてあげるよ」と部屋をノックしたら、ものすごくきれいになっている。床はピカピカだし、洗面所の窓もすっきりと明るい。
「えっ、ガラス、磨いたの?」と聞くと、そうだという。
「外がきれいに見えるでしょう!」とご満悦だ。ツインベッドもひとつ畳んで、部屋が広く感じる。
ノブタ先生が訪れたとき、部屋を借りる了解を得て、一日がかりで部屋の掃除をし、トイレとシャワーを磨きあげたんだけど、いまはそれ以上に快適になっている。
カーテンを取り外して洗い、食卓のカバーに変身させ。棚には、本とミニ・オーディオコーナーがあり、落ち着いた空間に.....。そして、すてきな音響でクラシックが流れる。
「すごいね〜!ギム。イギリス人みたいだ」と驚いた。
ホテルの快適な暮らしから、わたしたちが刑務所長屋と呼んでいる、大学の学生寮にやってきて、毎日ちまちまと掃除を繰り返して快適な住まいに変身させてしまった。なんとも、クリエィテブじゃありませんか。
それで思ったんだけど、人間、満ち足りた暮らしよりも、足りないものがあったほうが頭を使うんじゃないかしら、と思いましたね。より、快適に、よりくつろげる空間にと自然に思考が働くんだね。
ーー参りました! お坊ちゃま、おじさんだと思っていギムさんに脱帽です。