宿舎 in ラジャバット大学

 ウボンの空港にシニアボランテアの男性とタイ人の日本語教師が迎えにきていた。
彼は2日前に到着したそうで、会ったとたんに「寮が汚くてびっくりするかも....」と言った。
「えっ、どれくらい汚い?」と聞くと「まあ、タイの大学の寮だからね」と驚いたふうでもない。

 モールで日用品の買い物をし、ご飯を食べて寮のドアを開けると、壊れたロッカーに壊れた冷蔵庫、蓋の取れた電気ポットとがらくたが目に飛び込んで来た。真ん中にスチールのベッドが2個並べてあって、ビニールのマットが載せてあるだけ。日本の若者ならこんな寮には住まないでしょうね。


 壁は蜘蛛の巣だらけで床にはゴキブリの死骸がバラバラと散っていて、汚くて悲しくなった。
小さな窓があるが廊下に面しているので開けられない。洗面所に窓があり、そこに机を置きたい気分だ。昼間でも電気をつけないと真っ暗で字が読めない。あ〜あ、こんな年になって窓もない刑務所のようなワンルームに住むなんて、と思ったら気が滅入った。
 「明日、考えよう.....」とその日は箒を借りて、蜘蛛の巣を払いゴキちゃんを追い出して寝袋を広げて寝た。



 今日、打ち合わせに職員室に行ったら誰もいない。明日から授業だというのに、わたしゃ何をすればいいのだろう?このまま帰国したくなった。
 それにシャワーも壊れていて水さえでない。寮の管理人らしき兄ちゃんに「まいみ〜、シャワー!」と髪を洗うマネをして大げさに困ったら、すぐ工事の人に連絡して新しいのと取り替えてくれた。
 タイにしては素早いじゃん!そもそも到着する日がわかってんだから、掃除くらいしておけばいいじゃんか!がらくた部屋に入れてからに.....と、腹が立つやら悲しいやら。



 ところがお隣さんの若夫婦がとてもいい人だとわかった。アメリカ人とフィリピン人のカップルで「日本語の先生でしょ?待ってたの!」と喜んでくれた。おまけにアメリカ人の彼はとても日本語が上手。
「あらっ、こんないい人がお隣さんなら住んでみてももいいかも?」と気が変わり、大掃除をすることにした。



  隣りの若夫婦からモップをかり、ブラシは外を見回して拾った。洗剤がないので歯磨き粉でロッカーやテーブルを磨き、壁も床も歯磨き粉で磨いた。
 それなりにきれいになって、半年くらいなら我慢できるかもと思えてきて、シャワーを浴び、ぷちっとLEOビールを開けて安着祝いをしましたよ。
 明日はどうなることやら.......あしたはあしたの風がふく。