映画「8月の家族たち」


 おまけで観たのが「8月の家族たち」
アメリカ映画はあんまり好きじゃないんだけれど、同じ年代のメリル・ストリープのフアンなのさ。で、彼女の映画はけっこう観ている。
 
 今回は家族の問題がテーマで、メリル・ストリープがガンに冒されドラッグ中毒になった毒舌家の母を演じている。真面目な長女がジュリア・ロバーツで、その反抗期の娘がアビゲイル・ブレスリン。「しあわせのレシピ」で小学生だった子役が高校生くらいに成長していてびっくり。次女がジュリアン・ニコルソンで三女がジュリエット・ルイスと、超一流のキャスティングで、それぞれの映画の印象が強いから、作品を引きずっていて物足りないような気がする。


 父親が失踪したことで実家に姉妹が集まり、家族の秘密が曝露される。
「家族」ってなんだろう? ひとつの家で時間を共有しただけだろうか? 両親の不仲や、また年を取ると介護など厄介な問題が起こって来る。
 周りの友人は年を経ても仲良く暮らしている人が多いが、お互いに忍耐のいる事だと思う。家内別居している夫婦や、また近くに住む姉妹の一人が両親の身の回りの面倒をみているいうちに婚期を逃してしまう人もいる。


 親しい友人がそうだった。彼女は私より10歳くらい上で両親を看取ったあと、地方の家を引き払って札幌で一人暮らしを始めた。
本を読むのが好きで歴史に詳しく、小道具や陶磁器に目が利いた。ときどき蕎麦屋やおでん屋でお酒を飲んだ。妹さん夫婦が東京へ転勤になり、東京で学生時代を送った彼女もまた東京に転居した。わたしは彼女と文豪が住んだ界隈を歩き、お酒を飲んだ。


 そんな友人が「寂しい」とこぼした。子育てで忙しかったわたしは気に止めもせず、「寂しいときは電話頂戴!お酒飲みながらしゃべりましょう」と言って笑った。年の暮れに札幌で会ったが、年が開けた2月に友人は自ら命を絶った。あのとき、彼女の寂しさを理解していなかった。両親の介護や妹さんの子供達を面倒を看る暮らしから解放されたとき、自分のために生きるすべを見失ってしまっていたのだ。


 「8月の家族」を観て、彼女の孤独を思った。

     ーーひとひらの雲の行方よ 唯一度の我が生きにして独りのままに
                この歌を残して彼女は永久の国へと旅立った。