鬼のかく乱

 山を始めてから、ここ20年風邪を引いたことがなかった。
それが、1ヶ月程まえ喉が痛くなり、なんだか体もだるくて、これはもしかして風邪かな?と体をいたわり早々にベッドに入り、2、3日は咳をしていたが、そのうちに具合が悪いのも忘れてしまった。


 ところが、喉の痛みだけがとれなくて、食事のたびにものが喉につっかえる。喉に魚の骨でも引っかかったように痛いのだ。えっ?どうしたことだろう? なんで? と頭の中は疑問符だらけ。
 もしかして、食道になにかポリーブが出来ているとか? それは悪性で、ガンとか? と心配がどんどんエスカレートして行って、がくんと気力が下がった。

 美味しいものが好きなのに、食べられなくなるなんて最悪じゃん!もしかして、口からものを食べられなくなったりして? ヤダヤダ!食道をちょん切って短くしても、死ぬまで口からちゃんとご飯を食べたいもんだ、と悲壮な決心をして耳鼻咽喉科に行った。


 穏やかそうな高齢の先生が「どれどれ」と鼻からカメラを入れて診察してくれた。
それをモニターテレビで見ながら、「鼻も喉もきれいです。なんの異常もありません」とのこと。
「でも、先生。ご飯を食べるとき、痛いんです。何か出来ているとか? なにかありませんか?」と聞くと
「通常、喉頭ガンはここに出来ます。なんにもないでしょう?これは舌の付け根です。きれいでしょう?」といちいち説明してくれた。
「そうですか........」なんか出来ているに違いないと思っていたのでがっかりしたような、安心したような。


 そういえば、山を始めた頃、分不相応にハードな日高に行って、月曜日にベッドから立てなったことがある。これはたいへん!膝がおかしくなったと、出勤まえに整形外科に寄ってレントゲンを撮ってもらったら、「なんでもありません、きれいな骨です。単なる疲労でしょう」とのことだった。


 子供の頃、海辺で育ったので、おやつは煮干しや干物だった。お向かいの家では牛を飼っていたので、毎朝ご飯に牛乳を掛けて食べていた。それ以来牛乳が大好きでいまでも2日で1リットルを消費する。
 そんな食生活を見ていた母が「おまえの足は曲がっても、折れないさ」と言っていた。
まあ、バイクで何度か怪我をしているけど、骨が折れたことはなかったわね。感謝しなきゃね。

 
 60代になると、体の賞味期限が切れるらしく、いろいろ故障が出て来る。しずかに充電しながら、そのときがくるまで元気でいることにいたしましょう。なにやらな、心配な日々でした。