「そして父になる」是枝裕和


 気になっていた映画「そして父になる」を観に行った。
「誰も知らない」を観たのはずいぶん前のことだ。印象に残る映画だった。親に放棄された幼い3人の兄弟が生き延びて行く。是枝監督は三面記事からこの映画を作ったという。誰の視点でもないカメラが、そのまま子供を追った作品だ。



 今回は産院での子供の取り違え事件を題材にしている。
エリート社員の子と町の電気屋さんの子が看護師によって故意に取り違えられた。
 来春は小学校に入学という、十一月。エリート社員の子供、良多のお受験から物語は始まる。
入学前の血液検査で電気屋さんの子供が自分の子供ではないということが判明し、産院から連絡が入る。エリート社員は自分の子がのんびりとトロいので、やっぱりと思う。


 いままでの子供の取り違え事件では、100%が血の繋がった親と暮らすことを選択していると言われ、親達の努力が始まる。
 なんだろうね、女親はたとえ血がつながっていなくても育てた子が自分の子なのだ。理性ではなく感覚で、皮膚感覚でそう思うものだ。その二人の母親の辛さが伝わってきて涙がでた。


 子供を取り替えたあとで、電気屋の父親がエリート社員に言う。「子供は時間なんだよ。おれの子供とは遊んでやってくれ」
そして、うまくことが運びそうになったころ、エリート社員は、自分は良多の父親だ、ということを痛感する。やさしい良多が父から逃げ出す最後のシーンは切ない。



 是枝監督が多忙のためひと月、家を留守にしたとき、3歳の娘が「またきてね」と言ったそうな。それが彼のメッセージなんだな、と思った。


そして父になるhttp://youtu.be/maOYhSe2a-g