笑えない落語

 柳家小三治さんの独演会に出かけた。
前座を勤めた柳家はん治さんの「鯛」がおかしくて、おかしくてお腹を抱えて笑った。
生け簀の鯛たちが網ですくわれ厨房のまな板に乗るまでの話で、はん治さんが少ししゃがれた声で話し出すと鯛の哀れさとおかしみが心にじんわりと沁みてきて、なんだか鯛が食べられなくなりそうだ。かぶりつきの席でげらげら笑っていたら、自分の笑い声で落ちを聞き逃した。はて、あの生け簀の主の鯛の落ちはなんだったんだろう? 気になるなあ.....。


 前座がこんなにおもしろいんだったら、小三治さんはもっと面白いんだろう、と期待していたら、な〜んも面白くも、おかしくもなかった。
次の台詞の予測がついて、ぜんぜん笑えないのだ。え〜?そんなあ。師匠、もっとおもしろいのにしてくださいな。さっき、あんなに笑っていたお隣さんもし〜ん、としている。わたしゃ、あくびが出た。そういえば江戸の川柳に「噺家殺すにゃ刃物はいらぬあくびをひとつすればよい」というのがあったような、なかったような.......。


 中入りのあとの話は、そそっかしい粗忽者が箒をかけるため隣の壁を釘を打ち抜く話で、奮闘するわりにはこれもおかしくない。こりゃ、隣の家まで箒をかけにいくのかな?と思ったら、それが落ちだった。落ちが解ったらぜんぜんおもしろくないじゃん!



 てなわけで、昨夜は柳家はん治さんに乾杯です。こんなに笑ったのは久しぶりでした。小三治さんの「駐車場」が面白かったので期待していましたがね。まあ、こんなこともありでしょう。