映画の日「嘆きのピエタ」

 ここ数ヶ月仕事漬けの暮らしで映画にも行かず、また今週は追加で頼まれた土器を片付けていた。
一度、鉛筆を置くと仕事モードに戻るのがなかなか難しいこともあって、追加のコンテナを横目で見ながら、図書館へ行ったり、ミートソースを作ったりして土器を避けていた。
「そうだ、仕事を早く片付けたら、映画を見に行こう!」と目の前に人参をぶら下げて、1日早く仕事を終わらせた。


 朝、作図をチェックし、「これでよし!」と映画館へ直行。
平日の11時だというのに、入り口は中高年で溢れていた。「え〜、こんなに人気なの? 暗そうな映画なのに.....」とお目当ての「嘆きのピエタ」のチケットを買った。

 だが、キノの支配人が開演の案内をすると、お客さまは全部入り口に吸い込まれてしまい、残ったのは二人だけ。
顔を見合わせ、「あら、みんな、メリル・ストリープの夫婦げんかを見に来たのね」と笑ってしまった。カップルも数人いたから「夫婦の危機なのかな?」と初対面のその方と映画の話をすることに。

 彼女は蠍座のフアンだそうで、最近の蠍座の情報を教えて頂いた。以前、映画案内パンフレットの田中支配人のエッセイを楽しみにしていた。「彼の視点がいいよね、長く続いてほしい」と二人で意味もなくがってんし、中へ。


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 いつも大きなスクリーンの前に腰をおろすと、ふいと違う世界に連れて行かれる。
重いテーマの映画に魅かれるのだけれど、最近は恐い。現実の世界へとあとを引くので、元気なときにしか観れない。
だから、充分に睡眠を取って、炊きたてごはんのような真っ白な頭で映画館へ出かけたのだった。
 は〜、でもやっぱり恐かった。流血のシーンが多いので目をつぶり、悲鳴の度に耳を塞いていた。やれやれなこって....。



 主演のイ・ジョンジンが天涯孤独で冷徹な借金取り立て屋を演じている。その母親役はベテラン女優のチョ・ミンス
初めて肉親の愛を知る男と息子を愛しながらも憎む母。貧しい家内工業が軒を連ねる下町で、愛と憎悪が血と油にまみれてどろどろになってゆく。物語は二転三転し、引込まれてしまう。ピエタとは十字架から降ろされたイエスを抱く聖母マリアのこととか。彼らは昇華されるのか、否か。
 観終わって、ぐさりと心に残る作品である。