仕事再開


 ひょんなことから、考古学の作図の仕事を再開することになった。
帰国して、もうこの仕事に就くことはないだろうと、資料や報告書をすべて整理して身の回りをさっぱりとした。ところが、また仕事をすることになるとは.....。人生は最後までわからないものですねぇ。


  長年、遺跡の語り部でもある、土器、石器の実測をしてきた。職場では手実測と言って、実際に定規を立て、実物大の遺物を方眼紙に落としていくが、下請け業者は写真を元に素図を作成して図の中に情報を盛り込む。その仕事を始めたのだ。
 もともと、物に触って素材を確かめる習性があり、遺物に触るのが好きなのだ。土器や石器をなで回して、手の痕や使用痕を見つけるのが楽しい。土器や石器は大昔の人たちの手仕事であり、それが万年の時を経て、わたしの手の中にある。おもしろいじゃありませんか、時空を経て手から手へと受け渡されるのだ。お金にもなって、るんるんな気分だ。
 資料がなにもなくなってちょっと不安だがなんとかなるだろう。むかし取った杵柄? 一から出直し、再挑戦の新しい春だ。