騒音

 夜寝ていたら友人からの電話に起こされた。
長話をしていたらチャイムが鳴った。10時頃だと思う。「どなた様ですか?」と腰にブランケットを巻いたままドアを開けると下の階の方が........
「なにか、すごく煩いんですけど!」という苦情だった。わたしは、ああ〜と上を指差して
「上のお子さんが走り回っていますね〜」と答えた。


 毎夜、上の階からとんとんとんとんと走り回る足音が聞こえて微笑ましく思っている。3年前、タイに赴任した時は赤ん坊だったのに、そろそろ反抗期かな?などと想像していた。足音で子供の成長振りがわかり、息子のところにも同じ年頃の子供がいるのでさほど気にならない。
 しかし、我が家の下の階の住人は神経質な方なので気になるらしい。我が家を通り越してその下まで聞こえるとは知りませんでしたね。さほどの騒音ではないだろうに、と思いながら「もう少ししたら寝ますよ〜」と笑って答えた。


 その昔、娘が高校生だったころ、上の階には女の子のいる若いご夫婦が住んでいた。
反抗期の娘はぴたりと襖を閉めて、何か用事があって声をかけても「もお〜!もう〜!」としか返事がなく、襖の向こうには牛がいるようだった。
その娘が、朝な夕なに親が子供を叱る声が聞いて、「鬼のような、おかあさんだね〜」と言った。
「そうさね〜、女の子はたいして叱ることがないと思うけどね」と二人で天井を見上げていた。


 子供達が小さかった頃、わたしはテレビを押し入れにしまい込んだ。夜はゲームをしたり、本を読む時間だった。夫の帰りが遅いしーんとした夜は、かちかちかちと時を刻む鳩時計の音がとても大きく聞こえた。それを思い出し、
「お話はわくわくしたよね〜」と久しぶりに反抗期ただ中の娘と共有の時間を持った。


 〜♬ オルゴール音色と風がたわむれる午睡の娘はなにを夢みる