卒業式

 昨日、3月1日は我が校の卒業式だった。
朝、寮の食事に行ったら、生徒たちが白いジャケットを用意していた。イベントがあるのだろう、と推測して黒のスーツを着て行ったら卒業式だった。
 ここの学校は誰にスケージュールを聞いても分からないと言うだけで、私たち外国人教師は回りを見回して判断するか、生徒に聞くしかない。3年目にしても、これは摩訶不思議。学校には行事予定というもんがあるだろうに。
 まあ、午後から厳粛に式典が始まり、卒業証書が渡された。そのあとは生徒たちのパーティらしい。と言うのは、式典を途中で抜け出して、荷造りを始めなければならなくなった。運転手が見つかったので、明日の朝、ノーンカイのヤイムの事務所に荷物を運ぶと言う事になった。休みなので日当を支払うようにとのことだ。はい、はいさようでございますか......。



 段ボールの詰め込みをしていると、汗が滝のように流れ、首も顔もひりひりする。こんなに汗をかくことってもうないだろう。サウナのなかで仕事をしているようなもんだ。
 そこへ下の階の中国人のティアがやってきた。
「Maki.ここの学校の先生たちはゴシップ好きで嫌になった」と言う。
「知ってるよ。わたしはタイ語が分からないけど、中国人教師のインから聞いている」
「フィリピン教師のダナは毎月、お金がないから貸して、と言うのよ」
「それも知ってるよ。わたしは無いと断っているから」

 彼女は1年間タイにいて、タイ人教師と同僚に不信感を持ったみたいだ。タイ人教師の噂好きはどこでも同じだし、フィリピン教師のお金のだらしなさは男でも女でも定評だ。そうでない人を探すのが困難なくらいだ。宵越しの金は持たない、という江戸っ子気質とはまた違う。今が良ければあとはどうでも良い、というような超楽天的な国民気質だ。借金なんか屁とも思わぬ。


 案の定、ティアは毎月のようにお金を貸して、2000B貸すと、毎月500Bの分割払いにされたとか。ーーーははははは、貸しちゃいけないよ。
「ダナはさ妊娠していて、子供が2人になるんだよ。私と同じ24歳なのに5歳の子供がいてまた子供が生まれるんだよ。どうすんの?」ーーーそれは知らんかった。
「そんなの知ったこっちゃないって」と言いながら、前の教師たちのことや香港で生まれ育ったアナから聞いたフィリピン人のお手伝いさんの話などしていた。フィリピン人のお手伝いさんは男とお金の問題で首になる事が多いとか。やれやれ、とんだ卒業式だった。