桃の節句

 灯りをつけましょぼんぼりに〜 お花をあげましょ桃の花〜♪
亡き母は桃の節句にはちらし寿司を作って祝ってくれた。
 道南の農家から古い因習の残る漁村に嫁ぎ、子供4人のうち、上3人が女で、「女3人嫁に出せば身上つぶす」と言われたそうだが、母は男兄弟の中で育ったので女の子が生まれてうれしかったそうだ。4番目に念願の男の子が生まれ、たいそう喜ばれた。


 母は手の器用な人だったので、お正月の晴れ着や浴衣、夏服、セーターなど、いつも農作業の間に手を動かしていた。お陰で、一番上のわたしはいつもこぎれいな格好をしていた。妹たちはお下がりが多かったせいか、年頃になると洋服へのこだわりが強くなりましたね。
 わたしと言えば洋服に頓着がなくなり、きれいな服を着ても感動しないからね、とそのお金を本や映画に回してぐうたらしていました。


 母はおしゃれでもあったので、札幌に来る度にデパート巡りにつき合い、便乗して洗濯機で洗えない服を買ってもらったりした。(わたしのタンスを開け、洗濯機で洗える服ばっかりだね〜と呆れていたのだ)

 そのうちに、わたしの子供たちも巣立ち、山や旅に入れあげることになったので、山の装備と海外山行以外はどうでも良くなり、わたしは母や妹たちのお下がりを着るようになった。


 先週、ブログで「どうにかなりませんか?その服!」と、古い洋服を着ている60年代のおばちゃんを非難しているのを見かけ「すみません!」と思わず頭を下げた。
 なるほど、おしゃれは人のためでもあるんだな。年をとれば顔が見苦しくなるのだから、明るい色の服を着て鏡を見て笑顔の練習をしょう、と反省した次第。棺桶に入るまで、みかけだけでも若く溌剌としていましょう!




photo by Rika