拉致?

 昨日の午後、授業中にタイ人の英語教師から電話が入り「今から、カラシーンで試験を受けるように」と命令された。
「なんの試験ですか」と聞くと、「教育センターに教師が集まり、5時から11時まで試験をするから、15分で泊る用意をして、すぐ行って」と繰り返すばかり。今日はホテルに泊まり、朝、学校に戻るように言われる。
 どんな目的で、なんの試験をするのかを聞いても、「私も解らない、校長から言われただけだから」とのこと。
 わけの解らぬまま学校の車に乗ったが、北朝鮮の拉致のようだ?と不安になった。ヤイムアジアに連絡し、国際協力基金のタケイさんに「カラシーンでそのような試験はあるのか」を問い合わせてもらった。
 二人とも、「5時から11時までの試験なんて、タイではありえない」とのことで、タケイさんがタイ人を通して車の運転手に行き先を聞くと、教育省に行くそうだ。「カラシーン県の日本語キャンプの認定校の申請ではないか」と推測してくれた。どちらにせよ、教育省なら拉致なんてことはなさそうだ。


 教育省に着いて会議室に行ったら、20人ほどのタイ人教師が集まっていた。
ソムデットのタイ人中国語教師がいたので、なんのために集まっているのかを聞くと「タイ人教師のための試験問題を作っている」とのことで日本人のわたしは日本語の問題を2問作るようにと言われた。なんだか、どっと気が抜けた。

 そうかい、そんなの簡単じゃん。と5分もかからず問題を作って、パソコンで打ち込みしようとしたら日本語バージョンに変換できず、ようやく変換できてもエンターキーを押す度にタイ語に戻ってしまい、いっこうにはかどらない。
 終わったら、プリントアウトした問題用紙にサインして帰ってもいいとのことで、ホテルを用意してくれているわけでもない。慌ててドライバーに連絡し、教育省に戻るように頼んだ。途中から引き返してくれたらしく、わたしは無事に9時には自宅に戻ることができた。とんだハプニングにくたびれ果てて、ベッドに倒れ込んでしまった。


 夜中、爆睡中に電話が鳴った。ねぼけて「誰?」と聞くと、命令したタイ人の英語教師だった。「いま、どこにいるのか!」となにやら怒っているようす。
「家に戻り、寝ています」と答えると、「試験はどうした?」と聞くので、「私が試験を受けるのではなくて、タイ人教師のために試験問題を作るのが目的でした。もう終わりました!」と言うと向こうから電話を切った。
 まったくもう、ありがとう、のひとことも言えないタイ人って、なんじゃい?時計を見たら、11時半も過ぎていた。


 今朝、5時に誰かがドアをノックする。
「誰?」とドアを開ける生徒が立っていた。「シャワーをかして」とのこと。
「水、ないの?」と蛇口を開けたら水が流れた。生徒はシャワーを浴びて帰ったがこちらは寝不足だ。
 ベッドでぼ〜っとしていたら、また次の生徒たちがドアをどんどんノックして、寝るどころじゃない。まったくもう、いいかげんにしてくれ……。


 昼休み、廊下でいつもは学校にいない女校長に出くわした。
昨日のことを聞かれたので「問題なく終わりました」と答えたら「ありがとう」と笑顔を見せた。彼女はめったなことでは笑わないのだ。
 よしよし、昨夜の事件は水に流してしんぜよう....。