さくさくと生きたい

 さくさくと生きたい、と思っている。
元気にさくさくと歩いて行って、どん詰まりでぴょ〜んと空に飛んでいけたらどんなにか素敵でしょうね。
 しかし、天国には行けそうもないので、崖からすとんと落下して、あわてて蜘蛛の糸にしがみついているのかもしれない。


 カナダの語学学校で出会ったベトナム人の英語教師が、ビルから落下する夢をよく見ると言った。
ベトナム戦争から逃れて、家族でカナダに移住したのは7歳のときだったと言う。新聞配達をしながら学校へ通っていたけれど言葉が解らなくて孤独だったそう。いつも精神的に切羽詰まっていて、屋上のエッジを歩いているようだったそうな。そして、バランスを崩して落下するのだそう。彼女はカナダで英語とフランス語を学び、大学時代は日本と中国の大学に留学している。


 いま、山トレーニングをしながら、特別授業のプランと来学期の授業プランをたてている。タイの中高一貫校の選択科目としての日本語の授業レベルは低く、日本語コンテストの為の試験範囲、「みんなの日本語」18課まではこなせそうにない。
 日本に行く夢をもつ4名の生徒に、週に3時間の特別授業を始めたが生徒たちは学校の行事で出席できない。また、週末に寮生は帰省するので土日授業も不可能だとなると、切羽詰まり気分的には崖から落下する状況だ。
 生徒を信じるも、具体的な可能性のないものは信じられない。夢は具体的な内容とその破片を組み合わせてこそひとつの形になるのだ。


 どうすれはいいのか…。手始めに、この週末ひらがなの五十音をタイ語で暗記することした。明日、生徒の前で書いてみせよう。「ほら、あなたにもできるよ!」と言ってあげたい。昨年から日本語を学んでいる2名の生徒は、まだひらがなが読めない。