スコータイ遺跡

『タームカムヘン大王の時代、スコータイ大国は栄えたり、水に魚あり、田には米あり……』


 遺跡巡りはミャンマーバガン以来だ。
きんきらぴかぴかのタイのお寺は食傷気味なので、遺跡なら落ち着けるかな、と思いながら夜行バスに乗る。アナが1日先にスコータイに到着しているので宿は手配済みだ。
 カラシーンで教師仲間のコウスケ君と合流。美味しい物好きの彼がいろいろと食べ物を買い込んで来てくれて、「これがね、美味しいんですよ!」とお勧め豚の炭火焼、丸めて焼いたカオニャオなど膝の上に広げ、久々の小旅行にこころわくわく。旅は道づれって言うけれど、なかなかいいじゃん。
 まだ暗い早朝、スコータイに到着し、アナの部屋に潜り込んで仮眠。ダブルベットに三人で窮々と横になり「いつまでこんな旅してんの、わたしゃ...」と思う。


 目覚めて朝食を取り、オールド・シティに遺跡巡りに出かける。
うっそうとした森の中に13、14世紀にかけて栄えたタイ族最初の独立国家、スコータイ王朝の遺跡が大小合わせて300以上もあるという。
「えっ!すごいね〜」と思わず声がでた。こんなに保存がいいとは思ってもみなかった。アユタヤ遺跡よりも古いのにほとんどが残っているのだ。森の濃い緑も苔むした石の色も赤土に映えてすばらしく美しい。タイにきて始めて美しく整備保存されたものを見たような気がする。
 広大な遺跡公園を自転車で廻る。木陰の石敷きに仰向けになり風の音を聞きながら木漏れ日の空を眺める。太古の昔も同じ風の音がしたのだろうか。この優雅な王朝時代はどんなふうだったのだろうか、とあやしく手をくゆらせて踊るタイ舞踊に想いを巡らした。