がんばれメール

「がんばれ」とは言い易く便利な励ましの言葉だと思うが、今のわたしには心に刺さる。
 学校の年間の行事計画はあってないようなもので、毎週のように変更され、外国人教師はあわてふためく。しかも、予定など誰も知らないことが多い。雇用契約や給料は校長の一言で変更され、再交渉を余儀なくされる。プライドだけは高く働かないタイ人の同僚との折り合いや、言葉が伝わらないもどかしさ。夜、やたらと元気になって襲って来る犬ども。自宅環境の不自由さと食べ物。文化伝統の違いは、1年目は面白く新鮮に受け止めて過ごしても、2、3年目ともなると精神的に疲れてくる。


 まわりの日本人教師は、涙が止まらない、不機嫌になる、歯茎が腫れる、じんましんがでる、原因不明の下痢になるなど、ストレスが体に出ている。これらの症状はひと通りわたしも経験済みだ。
 度々送られてくるヤイムのメンバー宛、がんばれMLに「どうぞ、がんばれと言わないでください、みんな充分に頑張っていると思います。」とメールを返した。すると、またまた「あと2ヶ月、がんばり続けてください」とのメール。日本人なのに、なぜか日本語が伝わらない。


 涙が止まらなくなった友人には「がんばらなくていいんだよ、いつだって帰れるんだから.....」と言っている。真面目な人ほど心が壊れてしまう。それでなくても日本人は頑張ってしまう資質をもっているのだから。
 蚊やベッドまで這い上がるアリに眠りを妨げられ、何の虫かわからん虫に刺され痒さにがまんできず「ん〜、もう家に帰る!」と喚いている。
 外国にいれば日本人はもとより、何処の国の人ともお互いさま、助け合わなければならない。外国語教師の同僚とタイ人を肴にビールを飲んで憂さ晴らしもする。


 なにはともあれ、気軽に「がんばれ」とは言ってほしくない。頑張れない状況にある人や、いくら頑張っても「糠に釘」のタイでは頑張りようがない。この国に合わせて、ゆるゆると暮らすのがよろしいのだ。


朝日新聞の書評:「世界のてっぺんに立った!」でっかいエベレストに登ったぞ!
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000861005140001

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