プロブレム

 いきなり、チュンポーン先生から「今年度から外国人教師はアパートの電気代を払ってもらう」と言われた。外国人教師の部屋にエアコンが入っているので電気代がかかるからだそうだ。
 派遣元の契約書には「アパートとその経費は学校側で支払うこと」と記してあり、今年度の契約書を学校に渡してある。なのに、「そう、決まったから」の一言で却下された。
「わたしは同意しません!」とはっきりと意思を伝え、「なんなら、タイ人の相談役の先生に説明してもらいます」と怒った。今年こそは問題はないだろう、と思って赴任したらこの始末。サラリーも5月は半分と言っていたのが、3分の1に減らされた。
 フィリピンの英語教師のドナはそのことを知らなかったらしく「わたしは5月1日から、出勤のスタンプを押しているから1ヶ月もらいたい」と驚いていた。「それを言い張って1ヶ月を貰うべきよ!」と入れ知恵する。ドナは金庫番の先生にタイ語でまくしたてて、1ヶ月分のサラリーをゲットした。
 イギリス人のケスは同じくスタンプを押していたが、主張しなかったので半額しか貰えなかった。授業は15日からなので、スタンプ押しただけで給料をもらうのもなんだかおかしいが、これがタイのカスタムなのか?と多少疑問もある。ドナは「生活があるから、4月のサラリーがないと困る」と学校から生活費の前借りをしていたそうだ。全額もらえなかったら返済に困るだろう。
 ケスは最近、授業の合間にネットで他の学校を探している。新任の中国語教師のテアとベトナム語教師のアナは、なんのことやらときょとんとしている。
 「まったく、けちくさい学校なんだから…!」と一人で怒っているが、怒るのもエネルギーがいる。