8000m峰 14座登頂の快挙!

 登山家の竹内洋岳さんが8000m峰の14座すべての登頂を成し遂げた。
日本で初めての快挙で、NHK wroldで繰り返し放映していていた。どんなにか困難な道であっただろう、と思うと嬉しさがこみあげる。

 日本では今までに3人の登山家が14座の完登を目指していたが途中で帰らぬ人となった。その一人、名塚さんも数年前に9座目で山に消えたのだ。世界ではメスナーが無酸素で14座の登頂を成し遂げた。人間わざとは思えない。彼の著書を読むと困難をきわめたことがわかる。
 14座を登頂した世界の登山家たちの栄光の影に、8000m峰の頂に消えた多くの登山家たちがいる。彼らにも栄光あれ、と心から祈る。



2012/5/30 朝日新聞 天声人語から
「世界の屋根」と呼ばれるヒマラヤの山々は、畏怖(いふ)をこめて「神々の座」とも称される。明治時代に秘境に潜入した日本人僧、河口慧海(えかい)は8千メートル峰のひとつダウラギリを間近に仰いで、そこに仏の姿を見た▼「あたかも毘盧遮那(びるしゃな)大仏が虚空にわだかまっているような雪峰」と感じ入った。荘厳な山容に、あの「奈良の大仏」が天を突く姿を思い描いたのだろうか。実際、8千メートルの峰を仰ぐと、高さというより大きさに圧倒される▼112年も前に慧海が「仏」を見たダウラギリに、先週、登山家の竹内洋岳ひろたか)さん(41)が登頂した。ただの成功ではない。世界に14ある8千メートル峰すべての登頂を、これで成し遂げた。17年をかけた日本人初の快挙である▼近年、ヒマラヤの大衆化は著しい。エベレストには富士山顔負けの行列ができるほどだ。だが14座の登頂には、掛け値なしの困難がある。これまでに日本の登山家3人が、9座まで登ったものの落命している▼自然が人間を拒絶している超高所へ、意志と体だけで切り込む。達成まで生き延びることが目標になる、厳しい挑戦である。「冒険とは生きて帰ること」。植村直己さんの至言を胸に畳んでの長い道だったろう▼一流の登山家ほど「命知らず」の行動から遠いものだ。ひるがえって国内を見れば、「14座」ならぬ「百名山」をめざす中高年の登山者が列をなす。だが、百の頂上を踏むためには毎回無事で帰る必要がある。快挙から汲(く)みたい、登山の心構えである。



ヒマヤラの峰々 中央の三角形の山がエベレスト