ミルクの缶かん

 親になると、自分の赤ん坊がミルクの缶かんのような可愛いい子に見えるらしい。どう、ひいき目に見ても、かわいくないじゃん「かわいそうな親バカ、親ね〜」と醒めていたら、とんでもないことになった。
 娘が生まれたとき、髪の毛もなく目も腫れ、どうみても可愛くない赤ん坊だったのだ。
 「あらら、どうしょう?女の子なのに」と言ったら、私の母が「そんなことはないよ。鼻は高いし、瞼にすじが入っているから大きくなったら二重まぶたの美人になる」とカバーしてくれた。
 小さい頃から、ああ言えばこう言うで、頭ばっかり達者で憎たらしくもあったが大事に育てた。年頃になって、美貌もまあ人並になり、母親に向かって「なに?そのかっこう」とか「男、見る目ないよね〜」とのたまう。


 佐野洋子が書いていた。
『私は、デパートで子供の売り出しがあったら、どんな秀才、どんな気だてのいい子、どんな美貌の子が並んでいようと、我が子を迷う事なく買う。21歳のぬうっとした不細工な息子であるけど。
 しかし考えてみると、デパートで親を売り出したら、自分の親だけは買いたくないわね。もっといい親を買う。息子も私を買ってくれないだろうがそれでいいのだ。だって、あんな可愛いって思わせてくれたんだもの。…中略…。親って何だか阿呆ですわね、世界中のどんな親も』
 親は子供がどんな子であれ、「うちの子はミルクの缶かんのようにかわいい」と思っているもんだ。わたしも自分の子は可愛いと思っていたし、いまは自分の生徒がいちばん可愛い!こまったもんだ。


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