「ご冗談でしょう、ファイマンさん」Richard P. Feynman(1918-1988)

 ファイマンさんが院生のとき、部屋に来るアリに興味をもった。彼らはどうやって砂糖を見つけるのか?
 毎日、アリと格闘しているわたしは「わたしも知りたい!」と目に力が入る。
留守にしているとアリは1匹も見当たらないのに、部屋に戻り、ものの10分もすると、偵察アリがうろちょろし始める。何か食べ物の屑をみつけるやいなや、アリ軍団の黒い帯が出来上がる。「わあ〜、あんたら、なんでわかるのよ!」と毎度悲鳴を上げる。
 ファイマンさんはジャムやパンなどを閉まっておく場所を見つけられ、1匹も殺さずに退去させることに成功した。まず、侵入経路から離れた戸外に砂糖を置いた。次に、紙のフェリーポートを用意して、餌にありついたアリがフェリ—ボートに乗っかったところで戸外の砂糖置き場に運ぶ。餌を探して偶然に乗ったアリもせっせと運ぶ。すると、みるみるうちにアリの進路は戸外砂糖置き場に変更になった。アリどもは人間の息と自分の踏み跡がわかるらしい。
 
  好奇心満々のファイマンさんにすっかり魅せられてしまった。ノーベル賞を貰った物理学者なのに、サンバに凝りドラムを叩き、絵を描く。本業の物理学もすごい。何がすごいかと言うと、わたしのような理工、数学音痴にも解るように書いてあるのだ。原子核のなんたるや、原子力発電所の仕組みを遅れればせながら分かった次第。
 本を読む限りでは、まったく愉快な人生と想像してしまうが、「人がどう思おうと、ちっとも構わない」と言う信条は、ときに無責任だとか野人だとか陰口されたらしい。しかし、ファイマンさんの物事にとらわれない発想がノーベル賞に至ったのだ。
 第二弾の「困ります、ファイマンさん」も是非読んでみたい。