引っ越し

 インとルームシェアししていたフィリピン教師のリサが隣のアパートに引っ越しすることになった。
校長に、再三、他の部屋を用意してくださいと頼んでいたが、空いている部屋はないとのことだった。しかし、使っていないと思われる部屋がいくつかあり、リメイクするのにお金がかかるのが嫌なだけなんだよ、と言っていたら本当だった。
 引っ越しする部屋は壁を塗り替えただけで、ベッドがあるのみ。タイ式トイレにシャワーはなくて、タイル張りの水桶タンクがあるのみ。水浴びするしかない。トイレの壁と天井は蟻と蜘蛛の巣だらけで、掃除するのが大変だ。引っ越しを手伝いながら、言い出してから1ヶ月も経つんだから、もう少し部屋をなんとかしたらどうなんだろう、それくらいの時間はあったろうにと思う。
 わたしの部屋もそうだった。新任の教師が来るのがわかっているのに掃除もしない。着いたその日から、おっかなびっくり蟻の巣を撤去し、梁にはテープで目張りをし、壁をたわしで洗い、すべての床や壁、天井を掃除するのに1ヶ月も要した。
 学校の中庭に捨ててあった机を運び二つ合わせてテープルクロスをかけたら素敵なダイニングテーブルになったし、また外に放り出してあったべッドの板を剥がして大きな仕事机を作った。その上に白い50号の厚紙を敷き、パソコンを置いている。白いと蟻を退治しやすい。
 と言う訳で、我が家はとても快適なった。リサもしばらくは大変だろうと思う。