英語力

 当校は王立で全寮制の中高一貫校だ。
高い授業料を払って入学して来る生徒たちは、数学、科学を英語で学ぶ。これは、今年度からの校長の方針でステータスのようになっているが中身はからっぽ。高い給料を払って雇ったフィリピンの教師は、生徒を相手に単語当てゲームをしている。
 英語力のない生徒とタイ人のサポート教師は、科学と数学を英語で説明してもまったくわからない。生徒たちはクラスでパソコンを開くやら、携帯をするやら、しゃべりだすやらで、やかましくて授業にならないそうだ。サポートのタイ人の教師も英語がわからないから、サポートの仕様がない。フィリピンの教師が「ホームワークにします」と言ったら、タイ人の教師から、なに?と聞かれたそうだ。
 「校長は、生徒の授業料を無駄にしているよ。まったく!」とは、同僚の意見。わたしも同感だ。英語に力を入れる方法が間違っていやしないか?ケスは基礎力がないのだから、そこに戻らないとだめだという、タイ人の英語の教師がもっと真剣に教えないといかん、と怒っている。
 中国人の若者たちが、きれいな発音で英語を不自由なく話すのをみて、中国では何歳から英語を勉強するの?と尋ねたら、10歳から毎日英語の教科が組み込まれているそうだ。毎日2時間の学校もあり、ネイティブスピーカーの教師が担当しているという。中国は今や世界第2の経済大国だ。国をあげて英語に力を入れ、そして税金でボランテアの語学教師をアジア圏に送り込んでいる。中国人は逞しい。心の広さも持ち合わせているから、どこででも生き延びるだろうと思う。
赴任した日に泣いた若者たちは、来年もここで語学教師をするという。