ランチのお誘い

「きん、か〜お!(ご飯食べよう)」
コンケーンのバスターミナルに到着し、うろうろしていたら声をかけられた。バスを降りたはいいが東西南北不明、どこに待ち合わせの歩道橋があるのかわからない。おまけに予定より2時間も早く着いてしまったので、お会いすることになっている日本人の担当者に電話をいれているところだった。12時に迎えにくるというのでやれやれ、それにしても暑い。街はハレーションを起こしたフイルムのようだ。
 おじさんはにこにこしながら食べて見なさい、とさかんに食事を勧める。
「オーケー、かあ」と向いに座ったら、ミントのハッパに牛肉を包んでくれた。
スープ飲んでみなさい、カオニャオ(餅米)食べなさいと勧めてくれて、おじさんの後ろにいる売店のおねえさんがちらちらとこちらを見ている。この人食べれるのかな?というような顔。
まあ、時間もあることだし、おじさんの話し相手になることにした。と言ってもタイ語は単語しかわからないので、知っている単語を総動員してコミュニケーションを図る。わたしの隣で屋台のおばちゃんも、ちんぷんかんぷんな会話に興味しんしん、笑ってみている。
そこに鳥カゴをたくさんもった小鳥売りのおばちゃんが登場。さかんに「ヌンローイバーツ!(100B)」と言っている。小鳥なんかいらないよ、と思いながら、
「ぺ〜ん、ちゃんる〜い!(高いね)」「に〜、あらい?」(これなに?)」知ってる単語を言ってみる。
小鳥を買ってどうするの?と聞くと、おじさんは空に放すマネをする。で、また捕まえるわけ?と聞くとおじさんは、そうだ、とうなずく。ずいぶんいい商売じゃん?と不信に思いながら、「そうか、タンブンだ」と気がつく。カエルや魚を池に放すのと同じように、鳥も空に放して、功徳を積むという仏教の教えだ。お寺やお坊さんにお供えするのもタンブンと言う。家のお向かいの先生は毎朝早くに出かけるので、この先生は朝のパートの仕事もしているんだ、と思っていたら、お寺にタンブンに出かけているのだそう。
 そろそろ時間になって、おじさんに「ウオーキング.ブリッジ(歩道橋)はどこ?」と聞いても解らず、ジェスチャーで示していると、彼は電話で英語の解るおじさん呼びつけた。英語を話すおじさんが「こっちだ」と案内してくれて助かったし、おかげさまで楽しく時間もつぶせた。
 しかし、待ち人は12時には現れず、事前に約束した1時過ぎに登場。携帯電話片手に待つこと1時間。日本人もタイにいればタイ人のようになるのかも。わたしもタイ人になりつつある。突っ立っていたら何度もタイ語で道を聞かれた。