アデルとトッケー

アデルに笑顔が戻った。
笑うととてもきれいなお嬢さんだ。ブロンドの髪と透き通るような白い膚はアジア人のなかでは華やかに目立つ。学校は白い百合の花が咲いたように、ぽっと明るくなった。
まだ大学でサイコロジーの勉強している途中で、1年のブランクのあとでまた大学に戻ると言う。なぜタイにきたのかと聞くと、「一度来てみたかったから」と言うことだ。スコットランドは寒くて、もうすぐ雪が降ると言っていた。温かいところで働いてみたかったのかしらん? と勝手に想像する。
イギリスに留学したことのあるアシスタントデレクターの奥さんが、下女のようにかしづいて面倒を見ている。ホテルの送り迎え、コンビニへお買い物、クラスの案内、学校のスケージュルの説明と一日中付いて回っている。
さて、部屋もきれいになって、昨夜アパートに戻ったとのことだ。朝礼にアデルの顔が見えたので、「昨夜はよく眠れた?」と聞いたら「あんまり、眠れないけどだいじょうぶ」とのことだ。トッケー(ヤモリの大きいもの)チンチョー(トカゲ)が、まだ恐いらしい。鳴き声も恐いという。
「だいじょうぶ、彼らはあなたをかじったりしないし、蚊や蜘蛛を食べてくれるんだよ」と説明していると、チュンポーン先生が「マキはどうして、恐くないんだ?」と聞く。「そうか、日本にもいるんだ?」と言う。
「いないっちゅうの!」と声を大にして言う。ネパールによく行っていたからねぇ。そりぁ、わたしだって最初はこわかったさ。壁をちょろちょろして、思わず壁からベットを離したもんね。
「だいじょうぶ、今になれるよ。そのうち、ルームメートに思えてくるよ」と乱暴なことを言う。チュンポーン先生が「マレーシアでは,薬にするからトッケーは高いんだよ」と言う。インはインで「マキ、良いビジネスになるよ」と張り切っている。「そんな、ルームメートを売ったら、あかん!」と笑って答える。実は、見るだけで触れないのさ。
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