クライマーの死

先月の末、登山家の田辺治氏(49)が8000メートル峰、ダウラギリの雪山に消えた。
丁度、帰国した日のニュースだった。6年前の群馬の名塚秀二氏(49)の遭難死に続き、胸に同じような痛みが走った。登山家はいつの日にか、こんなことになるだろうとの予測はつく。だからだろうか、ほんものの登山家は慎重なひとが多い。いろんな危険を想定して事故を避ける獣のような感性が必要とされる。彼らは生きることが登ることなのだと思う。
8000メートル峰は、デッドゾーンと呼ばれる危険な場所だ。14座ある8000峰をすべて登った日本人はまだいない。名塚秀二氏は6年前、10座目にして雪山に消えた。登山報告会の講演でお目にかかった事がある。前夜,登山仲間と居酒屋で酒を飲んだ。ひょうひょうとして酒が強かった。酒に強いと高山病にもならないと笑っていた。
田辺治氏はネパールのナムチェバザ—ルで出会った。ローツェ南壁にトライして失敗したとのことだった。しかし、その数年後に3000メートルの壁を成功させた。札幌で開かれた報告会に出かけ、何者をも阻むように立ち上がる大岩壁に圧倒された。謙虚に淡々と登山行程を話し、とても好感がもてた。彼もまた10座目にして雪山に消えたのだ。こころから惜しいと思う。
14座の完登者は世界で20人余を数える。日本では12座の竹内洋岳ひろたか)氏(39)が最も近い。雪山に消えた二人のためにも、完登してほしい。
竹内洋岳 http://weblog.hochi.co.jp/takeuchi/history.html
7summit HP: http://web.me.com/dreamispower/index/Welcome.htm