樹木

学校から戻ったら、宿舎の前にある樹木のトンネルが消えていた。
伐採されたあとが痛々しい。「なぜ、こんなことに?」この緑のトンネルは日差しを遮り快適な空間だったのに。私の部屋の窓からは緑の壁しか見えず、秘密の隠れ家に暮らしているような気分で気に入っていた。反対側の窓の外もジャングルのようで嬉しい。
それが、突然樹木が伐採された。あまりにも悲しくて、チュポーン先生に電話して文句を言った。
「あなたの国は樹木が素晴らしいのに、なんで切ったのか!樹木は日陰を作ってくれるし、洪水にもならないのに。簡単に木をきるなんてひどすぎる。元に戻るのに何年かかると思ってんの!」と憤慨してまくしたてた。彼は私の剣幕にびっくりして、次に笑った。こんなことに真剣に腹を立てている私がおかしかったのだろう。「とにかく、学校の作業員にこれ以上切らせないで!私はとても悲しい気分だ」と言って電話を置いた。
亜熱帯の国だから、木が生長するのは早いだろうと思うけどなにも切らなくたって。エンドウ豆のおばけのようなものがぶらぶらとぶら下がっていておもしろかったし、美しい赤い花が咲いていたのになにもなくなって、とても悲しい。切り口の白い肌を見る度に胸が痛む。