空手

そろばんのNobuta先生は空手の黒帯を持っていて、放課後、生徒たちに空手の講習をすることになった。生徒たちは、Nobuta先生を、どらえもんの<のび太>だと思っている。どらえもんの<のび太先生>は、2日目にはもうすっかり生徒の人気者になってしまった。
「タイの生徒は時間なんて守らないから来るかしらね」と言いながら二人でストレッチを始めた。しばらくしたら中学3年生の女子生徒たちがやって来た。3年3組のやる気のない生徒たちだ。勉強と違いスカートをジャージに着替え、やる気まんまんだ。男子生徒も遠回しに見物している。
い〜ち、に〜い、さ〜ん、を、タイ語のぬ〜ん、そ〜ん、さ〜んに言い換えて、空手の型を練習した。少し動いただけで汗だくになる。首に巻いたバンダナから汗が滴り落ちた。Nobuta先生はそろばん教室の経験が長いので生徒の扱いがうまい。号令に合わせて真剣に練習している。「相手がいると基本の型がやりやすいんだけどなあ」というので、わたしが相手をした。まねごとをしただけなのに、「かっこいい!」と憧れのまなざしだ。
まだ、山を始める前に仕事のしすぎで腰を痛めたことがあった。椅子に座るのが苦痛で整形外科に行ったら、何処も悪くないから運動不足だろう、ということだった。そんな痛いのに運動するのかいと思いながら、どこかでヨガでもやってないかしらと思っていた。近所の5歳の男の子が集会所の空手教室に通っているというので見学に行った。空手だって、ストレッチくらいは教えてくれるだろう、と思ったのだ。男に子に付いて行くと、高校生のお兄ちゃんが組み手をしていた。風を切る音がカッコいい!「いいね〜、わたしも習うよ」と、そく空手着を購入し、5歳の男の子といっしょに集会所に通った。高校生のお兄ちゃんのようになりたくて鏡をみて型の練習をした。一冬過ごしたら腰の痛みはなくなり、怠け者の私は、そのままやめてしまった。
ひさしぶりにストレッチをして気持ちがよかった。