北イタリア ドロミテ

「イタリアにも、山はあるよ」とマリナに言われて北イタリアのベロ—ナに出かけた。
ドロミテが近い。週末、マリナとパートナーのニコルの三人でドロミテへ一泊泊まりのトレッキングに行く。
明るい青グレイや淡いピンクの石灰岩の巨大で美しい岩峰が屏風のように連なる。森や牧草に覆われた斜面から、いきなり鋭い垂直の岩壁がそそり立ち、裾野に広がる針葉樹の緑が岩峰をいっそう際立たせている。「イタリアにも山があるよ」と言われても、わたしが登れるような山ではない。夕日に浮かび上がる岩峰はいっそう神々しく見える。

セルヴァで裾野の山荘に一泊した。早朝ロープウェイを利用し3000mを縦走するコースを組んでいたら、日曜日はロープウェイが休みだった。日本ではあり得ないと言いながら、湖周辺のトレッキングに変更した。
オーストリア国境の近くの山道を汗ばみながら登っていると、ニコルがキブアップして「戻って新聞を読んでいるよ」と言う。マリナは「いつも、こうなんだから」と怒る。
アウトドア派のマリナと読書や音楽好きインドア派のニコル。仕事の合間を縫って自転車で遠出をするマリナと、読みたい本が沢山あってベッドに本を持ち込んで怒られると言うニコル。いろいろと食い違いの多い日常らしく、大丈夫なのかなあと思いながら二人の間でそれぞれの愚痴を聞いていた。
結局、マリナと二人で「ある日〜♪森のなか〜クマさんに〜であった〜♪」と<森のクマさん>を歌いながら登って降りた。湖畔に出るとニコルがベンチで待っていた。