憧れのスイス

白い山に憧れた。憧れたのは美しい風景としての、見るからに気高い山だった。
それは登る対象としての山ではなく、ただ見るだけのものだった。白い山の写真を切り抜いては空き箱に入れていた。外国の山が多く、お気に入りはヨーロッパアルプスだった。緑の斜面に花が咲き乱れ牛が草を食んでいる。その向こうにそびえる白い峰々を飽かず眺めた。見るからに空気は澄み、きっとペパーミントのような匂いがするのだろうと想像した。