ウニ捕り

北海道の南、江差から松前への海岸線の途中に生まれ育った集落、石崎がある。日本海に面した狭い扇状地の小さな集落で川を挟んで二つに分かれている。松前への道は海岸線の切り立った崖の上にあり、隣の集落までは十三曲がりといわれる曲がりくねった山道だった。その崖を降りていくとウニや鮑の捕れる穴場がある。山道はクマが出るので海岸を歩いた。
海は清々と青く、真夏の強い日差しが白く反射する石の海岸線をもくもくと歩いた。足場のよさそうな石をめがけて飛ぶように歩き、岬の岩場を登っては降りた。
いつも歩きながら<森のクマさん>の歌を歌っていた。ほんもののクマは恐ろしかったが、
歌のなかのクマさんはユーモラスだった。花咲く森のなか〜♪と歌いながら海辺の石原を歩き、白い貝殻の小さなネックレス〜♪と貝殻を拾った。
日がな一日、夏休みの海遊びはちょっとした冒険だった。海辺の冒険は沢登りの感覚によく似ている。