カトレア


  日本画の先生が、今週は学校祭で講堂を使うので描き終わった花は持って帰っていいとのこと。
「え〜、嬉しい!」と「カトレア」と「南蛮」をもらうことにした。
 「カサブランカも要らない?」というので欲張って貰って地下鉄に乗ったら、混んでいてカサブランカが潰されそう。足元に向けて邪魔にならないようにして、花をかばった。家に帰って浮き浮きしながら開いたら、なんということ、カトレアがない!あれ、どこに消えた?と後戻りしてみたが落ちているわけがない。たぶん地下鉄の中だろう。ーーー誰かに拾われていたらいいけど、踏まれてたらかわいそう。吸い込まれそうに綺麗な濃い紫だった。


 昔、友人が個展でお祝いにいただいた君子蘭を、「ランの花はあまり好きじゃない」と言うので貰った。立派な花が豪華に咲いていて、日の当たるところに置いた。
 夜、トイレに起きたら暗闇の中の花が怖い。その存在が重くて、覆いかぶさってくるような息苦しさを感じるのだ。朝起きたら、高校生の娘も「お母さん、この花怖い」というので、花好きのご近所さんに貰ってもらった。


 それ以来、わたしもランの花はあまり好きじゃない。タイではマーケットや夜店でタダのような値段で売っている。でも、昨日のカトレアは美しいと思ったわ....。