消火栓


 フィラディルフィアの友人宅に着いた日。
「makiさん、あのね。クラスメートが君の誕生日のプレゼントを見つけたって言うの。それがこれ!」とスマホに添付されていた写真は黄色の消火栓。
「え〜、なにそれ! プラスチックなの、それとも空気が入っているとか?」とわたし。
「いや、30ポンド (15キロ)あるって。君の喜ぶ顔が見たい!って張り切っているわ。どーうしょう.....?」と困り顔。
「なんで、誕生日プレゼントが消火栓なわけ?」と問うと経緯はこう。


 友人曰くーーー
みんなで飲んでいた時、消火栓の話をして一席ぶったのよ。消火栓って可哀想よね、車止めるときは邪魔にされ、散歩の犬にはおしっこかけられてさ。普段はみんなに見向きもされないのよ。だけど、あの下には水が流れ繋がっていて、みんなを守ってくれているのよ。よく考えたらそのために私たちは安心して暮らしていけるのよ。人の暮らしもそうよね。ってなことを酔った勢いで話たら、彼はえらく感動してね。奥さんや娘に話した上に、何かあるたびに「Yuko ほら、あの話しをして!」というの。


 ふ〜ん、なるほどね。いい話だわ。とそれ以来わたしも消火栓が気になって仕方がない。フィラデルフィアのは黄色だったが、ニューヨークは黒に頭がシルバーでおしゃれな感じ。札幌の消火栓は黄色だけど、三越前の交差点の消火栓はモスグリーンでおしゃれだったね。


 で、誕生日プレゼントはどうなったかというと。
彼女の反応がパッとしないものだから不安になったらしく、いるよね? 嬉しい? と何度もメールしてくるので学校の先輩に「ことわったら傷つくよね?」と相談したら、「そりゃ、傷つくわよ...」とのことで「欲しい!」とメールを返したのだけど、ワンルームの部屋なのに、どこに置けばいい?と悩んでいた。


 ーーーなんか、アメリカらしい話じゃん!