上手くなりた〜い!


 シンガポール人のジョイさん、「上手くなりた〜い、です!」と言いながら、長靴をデッサンしている。
 「あはははは、みんな思いは同じよねぇ....」と顔を見合わして笑ってしまったが、「ん、どれどれ?」とデッサンを覗き込む。
 「えっ、長靴の質感、出てんじゃん?」と言うと、対比がおかしいですと言う。
 「すごいね、対比なんて言葉を知ってるなんて!」と他のことに感心していると、長靴が短いんだそうだ。そう言われると少し短いような? 木炭デッサンの若者が「言われないと、わかんないです」と妙な慰め方をしていておかしい。


 人生の記念に、と娘さんの成人式の晴れ着姿を120号の大作に挑んでいる同世代の方がいらっしゃる。
 週末、娘さんの顔がおかしい?と描き直したそうだが、わたしには同じに見える。肌の色がどうも...と悩んでいて、園長先生に相談している。先生曰く「この段階で肌の色がどうのこうの、と言ってもしょうがないし、どうしても気に入らないんだったら、初めから描き直した方がいい」とアドバイスしていて、これまたおかしい。
 極め付けが、日本画の講師に「えっ、どこをなおしたんですか? 同じに見えますが。同じに描けるってすごいです」と物静かな口調で言われていて、悪いけど吹き出しそうになった。


 まあ、いろんな方がいらっしゃるんだけど、思いは同じ。みんな上手くなりたいのよ。