日高山脈縦走

 

 春、残雪期に芽室岳から日高全山を縦走していた単独登山者が遭難し、遺体で見つかったという。初めて入会した山岳会のメンバーで、縁あって一度会食をしたことがある。他人事とは思えず、日高の地図を広げた。


 急峻な尾根が連なる日高山脈の縦走は岳人の憧れだ。
アプローチが長く、水が取れないので春先に縦走することが多い。山岳会に籍を置いていたころ、四季を通して日高に足を運び尾根をつないだ。
 しかし、中部日高のペテガリからヤオロマップ岳の間が歯抜けになっている。あの時は夏で中ノ岳の藪漕ぎに時間を取られ、予定のコイカクの沢まで辿りつけず早稲田尾根を降りたのだ。水がギリギリで降りる選択しかなかった。


 頭蓋骨を骨折していたというから滑落した可能性が高い。
思わず「山では死にたくないね」と言葉が出た。山がどんなに美しく素晴らしくても、死ぬ時は空気が甘く、人の気配がするところがいいと思う。


 遥か遠いダウラギリに眠る河野千鶴子さんを思うーーー合掌