七福神 志の輔


 初笑いはやっぱし、我らが志の輔でしょう!と機の糸掛けをしながら、落語を聞いている。


 勤め人は明日から仕事なので、友人に帰国の電話を入れると
「あれ? タイの大学を辞めるのは春じゃなかった?」と言われた。
「そのつもりだったけど、4月からアートスクールに行こうと思って...」と答えると、美大卒の彼女は驚いた風もなく、
「絵画より、機織りを極めてほしいわな」とのこと。ーーーそうそう、山に凝りだしてから機織り機はテント干し場になってしまった。


「機織りも考えているけど、デザインとか色彩の絵画の基本を学びたいんだよね」と言うと、
「アートスクールに行くとカリキュラムがあって、一応全部勉強することになるから、飽きるかもよ?」とのことだ。
「あ、そう....。面白くないのかい? やってみて面白くなかったら違う方法を考えるわ」と答えると、
「ま、やってみな!」と妙な励まし。


 機織りを再開しようと思ったのは、昨年の春、帰国の際に福岡に立ち寄った時、わたしが最初に織ったマフラーを大事に持っていたことだ。
 30代始めに糸紡ぎと染めを習い、紡いだ糸を織りたくて機織りを始めた。最初のマフラーは登別の羊の牧場で、伸びのいい部分を選りすぐった原毛を糸にして織ったもの。原毛を藍の生葉で染めてから、手紡ぎをした。30数年も経つのに色落ちもなく、織った時のままだ。何度も水をくぐっているのに、まだふんわりと優しく弾力がある。毎年、冬の発掘現場で重宝しているのだそう。


 あのころ、家族や友人に手紡ぎの糸でセーターや帽子、手袋を編んたり織ったりしてあげていて、娘でさえ「捨てた」と言うのに.....恐れ入った。根気が残っているうちに、もう一本マフラーを織ってあげよう、と思った。


「あてにしないで待ってて」と言ったら、「してないわ、また面白いことを見つけたら、どっかへ飛んで行くんでしょ!」と言われてしまった。ーーー当たってる。


七福神https://youtu.be/DovOceLAPNU