金次第?


 隣に、中国人のカップルのご両親が入居することになった。

お隣さんの部屋を掃除していたら、中国人のカップルが覗いて「部屋を移るの?」と聞くので、「次に入る人のために」と答えたら、「両親と赤ちゃんがホテル住まいなのでいいかも?」とのことだった。


 ミックに「掃除しといてあげるから」と言ったら、「掃除の人がいるから、しなくていいのよ」とのことだったけど、出たあとの部屋を覗いたら、すごいことになっていた。なにもかも油汚れでベタベタしていて、台所も冷蔵庫も腐った野菜でドロドロ状態。
 ミックのお母さんが「掃除ができないのよ」と嘆いていたけど本当だった。ミックから「日本語学科の生徒はマナーがいいから、お皿洗いしてくれない?」と頼まれたことがあったけど、今時の学生は皿洗いで小銭を稼ぐようなことはしない。


 

 彼らには赤ちゃんがいるので、掃除のスタッフにお金を払い、徹底的に掃除をしてもらうことになった。スタッフはお金が入るとなると力の入れようが違う。朝から夕方まで部屋を磨き、洗面所の汚れを落としていた。
 翌日、「きれいになった?」と訊くと、「みてごらん!」と部屋を見せてくれた。トイレもタンクも白く輝いて、アルミのシンクも銀色になっていた。お金を払えばこのようにしてもらえるんだ。そして、エアコンも水洗トイレも自前で直すといったら、即業者がやってきた。
 「お金次第ね....。」とつぶやいたら、「そうよ、タイだもの」と笑われた。


 それにしても、ここに赴任してきたとき、掃除した形跡などなかった。
蜘蛛の巣を払い、ゴキブリを集め、手術台のようなビニールマットの上に寝袋を広げて寝た。掃除はすればきれいになるけど、使えないシャワー、水が吹き出る洗濯機、壊れた扇風機、直してもらうのに1年かかった。
 ーーーははははは、お金を出せば即解決したのだ。それに、タイ人は掃除ができない、というか、知らないと思ってました....。


 一番端の部屋には博士課程の中国人の男性が移ってきたので賑やかになった。


色の魔術師クレー: